長所が短所で短所が長所 ―考える(5)
「長所と短所」というとそれぞれがバラバラに存在しているイメージもするが、実際にはそうでもない。
「落ち着いている」は「退屈」だし、「思慮深い」は「何考えてるかわかんない」だし、「ハキハキしている」は「うるさい」だし、「素直」は「思考停止」で、「明るい」は「バカ」(笑)。「誠実」は「固い」、「堅実」は「ケチ」。「頭の回転が速い」と「上からものを言う」ように感じられるし、「慎重」なのか「臆病」なのかの区別はつき辛いし、「サバサバしている」人はたいてい「大雑把」。
このように実は同じ性格のことを、肯定的に捉えると前者で否定的に捉えると後者になってることが多いと思う。だから長所を伸ばせば短所も伸びるし、短所を無くせば長所も無くなる、とそういうことにもなる。しかも人の性格というのは自分で決めるもんじゃなく、他人から決められるという性質のものだから、「性格改善」なんて難事業の成功率はおそろしく低いってことだ。
これは人の性格の話でもあるが、他のものにもあてはまる。たとえば日本。日本の長所も短所であり、短所が長所なんですよ。
新型インフルエンザへの対応が、特に根拠は無いけれども、どの国よりも優れているのは日本だと思う。
日本の長所の一つに現場作業員というか末端作業員たちの責任感、使命感、順法意識の高さというのがある。わかりやすく言うと、どの国のおまわりさんよりも「賄賂」が効かないおもわりさんが多いってこととか。交通違反のときなどに、そもそも試そうとも考え付かないくらい「受け取らないだろうな」という認識ありますよね。おまわりさんだけでなく入管などの役所とかもそうだし、公務員以外でも、店舗などで列に並んでいるときに「金払うから順番早くして」と頼まないし、たとえアルバイト店員だろうがあっさり「いいですよ」とは言わないだろうなって思うほうが、まあ普通でしょ。
それと情報の行き渡り方が徹底しているというのも長所と言っていいだろうと思う。部数激減とはいえ新聞を取っていない家庭は少数派だろうし、影響力の低下が言われているテレビ地上波だってゴールデン・タイムの視聴率を合計すれば50%以上にはなるわけで、新型インフルエンザの話題も、発生してから、あっという間に情報が行き渡りました。
これを当たり前だと思ってはいけません。
公共機関がストップしたメキシコはともかく、アメリカ国内でまだ新型インフルエンザの情報を物理的に知らない人なんてたくさんいるはずです。個人的な経験でいうとシドニー五輪開催時にアメリカ出張していたことがあるんですが、NYでも田舎でも五輪が開催されていること自体を知らない人ってのが、たくさんいてびっくりしたことがあります。日本なら昨年の五輪開催地がどこだか、もし知らない人がいたら「変人」扱いされるでしょう。理由としては日本に住む人のほとんどが日本語の読み書きができることが大きいんだろうと思います。
「責任感/使命感/順法意識が高い」
「情報網が発達している」
この長所により、おろらく日本では新型インフルエンザが蔓延する可能性が低い、と考えるわけです(もちろん他にも理由はあるでしょうけど)。
で、と同時にこの長所が短所にもなるわけです…いわゆる「同調圧力」というやつですな。
先に「五輪開催地」を知らない人がいたら「変人」扱いされるだろうと、書きましたが、別に五輪に興味ない人がいたって、五輪やスポーツが嫌いな人がいたって、もしくは日本語の読み書きができないため情報入手経路が日本に住む大多数の人とは違っているから知らない人がいたって、いいじゃないですか。少なくとも「変人」扱いは失礼でしょう。でも、実際に日本ではそういう人がいる可能性のことをあまり考えていないし、考えていないからこそ、勝手に「変人」扱いしたり、さらには「非難」や「排除」へとエスカレートする傾向があります。これは短所というべきだと、ぼくは感じます。
同様に新型インフルエンザの件でも、感染が疑われた人や場所や地域などへの「非難」が少なからずあるそうですし、それが「排除」へとエスカレートすることを危惧しています。
ただ、「性格改善」なんて難事業の成功率はおそろしく低い、とも書きましたので、日本も長所を伸ばして短所を改めるべきでは? なんて「天声人語」みたいには締められません(笑)
んじゃ、どうしましょうか。まあ、そこで、「考える」なわけです(^^;
個人の性格も国の性格も、長所と短所は同じものとまずは考える。別のものと考えるから、どうにか別々にコントロールできるんじゃないか、と思ってしまうわけなので、同じものと考えれば、まずは「それは取り除くことができない/むしろ取り除くと長所まで奪われてしまう」という点から出発して、「どう付き合っていくか」と発想していく方向になるかと思います。
往々にして「良いこと」は暴走しがちです。なので「良いこと」を推し進める、または支持する場合には、その「良いこと」のネガティヴな側面についても考慮することを、それがなかなか難しいことはわかっていますが、それでもやっぱり、そう考えることにしましょう。
地味ですがとりあえずそれが確実な気が。
その後のことは・・・まあ、おいおい、考えていくことにしましょうか←これが私の長所で短所(笑)
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