■新選組!第45回「源さん、死す」11/14O.A.
さあ、かばうぞ!
まずは▼▼▼新選組! 局中用語辞典▼▼▼ から
>マトリックス【まとりっくす】
> 第四十五回「源さん、死す」における、誰も予想しえなかった戦死シーンのこと。
> 淀・千両松の撤退戦にて、源さんが怪我を負った周平を庇うように死ぬ、のはいいのだが、
> その前の描写が、マトリックスカメラワーク(スローモーション&見える弾丸軌道)で迫る銃弾
> →源さんの刀へ「シャキーン」という妙に軽い音とともに激突、左右に弾け飛ぶ弾丸
> という、武蔵(2003年大河)の巌流島もびっくりのマトリックス仕様になった。
> そのためか、本来であれば第三十三回「友の死」の如く、
> 号泣レスで溢れ返るはずであった本スレは、ポカーンとワロタと泣けなかったレスで埋め尽くされ、
> 大河全体のひとつのクライマックスともいえる、この回を貶めた演出家への怨忌に満ち溢れた。
> ちなみに、当の演出家・清水一彦氏は公式サイトにて、
>「(中略)構えた刀の刃に放たれた弾の一発が偶然、当たってバチーンと斬れたという設定。
> いわゆる “弾丸斬り”というシーンを演出しました。
> 時代劇の中にCG的なものを入れることに、拒否反応を抱く方もいるかも知れません。
> しかし、この“弾丸斬り”は源さんをスーパーマンに見せるためではありません。
> 源さんの思いが天に通じたというか、鬼神になったような一瞬があってもいいんじゃないか
> という思いから生まれた発想です。
> (中略)やはり源さんの最期は、一瞬神の如くというか、
> 一瞬カッコいいところを見せて、どんと倒れるというのが、一番ふさわしいと思ったからです」
> などと神妙にコメントしているが、
> 「おまえ単にマトリックスやりたかっただけちゃうんか」という視聴者の思いは禁じ得ない。
> 池田屋での喀血CG(>>39)、後述する「幽霊源さん」も併せ、
> NHKと清水氏には、CGの使いどころというものについてじっくり考えていただきたいと愚考するばかりである。
別にこれが視聴者の総意だというわけでは無さそうだけど、ま、それにしても非難轟々だったのは間違いないわけで、それを承知の上であえてこの「マトリックス」をかばいたい。
このシーンの前に土方と「もう刀の時代じゃない」「寂しいこと言わんでください」というやり取りがあった。そのあとに、周平を救うため銃弾の雨の中へ突っ込む源さん・・・というシーンが来るならば、そのまま源さんがなすすべなく蜂の巣になっちゃう方が「フツー」の演出でしょう。ぼくだってそう思う。でも、そこで我々は「奇蹟」を見ることになったんだよ。
先に演出論からいっちゃうと、映像演出にはセオリーはあるけれど正解はなく、またベターはあるけどベストはないんです。数ある方法論の中から、演出家がベターなものを選ぶ作業のくり返しが一つのシーン、一つの作品へとつながってゆきます。その時に「何が正しいか」「何が受け入れられるか」などの消極的な選択肢からでなく、「何を表現したいか」「何を伝えたいか」を積極的にアプローチすることが、「ものづくり」における「志の高さ」の一つの指標であり、アグレッシブな(とはいえたかだか「マトリックス」如きがいまさら先鋭的だとも思わないけど)表現を後押しできるチーム環境の充実度の反映だったりするのだと思います。清水監督自身の演出意図の一端は上記にも引用してあるけれど、それは言い訳なんかではなく(もしくはすべての演出はあらゆる言い訳の集積だ!)、あの「マトリックス」に込めた思いを素直に語っているわけで、「自分にはそうは見えなかった」かどうかはひとまず別にして、ストレートに受けとめられるべき言葉なんじゃないですかね。
清水監督が込めた意味、ぼくが見て感じた意義・・・井上源三郎が起こした刹那の「奇蹟」は、新選組、そして武士、さらには「かつての日本」へのレクイエム。「マトリックス」だけでなく、永倉や原田らの切り込みも、源さんが死んだ直後の大暴れ斉藤一も、すべて「最期の新選組」のはじまりを告げる「剣の時代」の悪あがきなんです。「剣の時代」のラストシーンを彩るために天が用意したのが「最強の剣豪集団」新選組だという歴史の粋な計らいなんだよ。
だったら試衛館の猛者の一人、井上源三郎(という肩書きが似合わないのがまた素晴らしい)は、死の直前に「奇蹟」の一つや二つ起こしますって、たかだか薩摩のなまくらダマくらい斬り飛ばしまっせ、てなもんだ。
ぼくが「マトリックス」を見たときに感じたのはそういうことだし、涙が出るほど感動したし、それになにより源さんカッコよかった。
試衛館メンバー(だけじゃないけど)の最期のシーンは、一人一人工夫を凝らした記憶に残る名シーンになっています。だからこそ源さんも、ただ撃ち殺されるんじゃなくて、「井上源三郎がいた」ことを強烈に印象づけるなにかを伴って散らなきゃならない・・・だからぼくは、沖田や斉藤や近藤や永倉らだけが剣豪だったんじゃなく、あの源さんだって新選組六番組長で剣豪だったんだぜ、それも「剣の時代」の終わりに剣でのし上がった最強チームの重鎮だったんだぜということを1カットで示した「マトリックス」は全面支持なんです。
思えばこの「新選組!」で、視聴者に源さんを最初に印象付けたのは、#5「婚礼の日に」で山口一を一瞬にして取り押さえたシーン。もちろん、人のいいみんなの源さんという描写がほとんどで、いかにもそれにハマっていた小林隆という名キャスティングだったことが「新選組!」井上源三郎の魅力の中心ですが、「やるときはやる」があったからこその源さんだったんだよ、と、最期にそれを思い出させてくれたという点でも「マトリックス」はよかったなあ。